口腔癌と間違えやすい病気
口腔の前がん病変・前がん状態
前がん病変(precancerous lesion)とは
形態的にみて正常なものに比べて癌が発生しやすい状態に変化した組織。
前がん状態(preprecancerous condition)とは
癌となる危険性が著しく増大している一般的な状態。
前がん病変 | 前がん状態 |
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口腔潜在的悪性疾患
口腔の前がん病変・前がん状態 → 口腔潜在的悪性疾患(oral potentially malignant disorders)
- 白板症
- 紅白板症
- 紅板症
- 口腔粘膜下線維症
- 先天性角化異常症
- 無煙タバコ角化症
- 逆喫煙による口蓋角化症
- 慢性カンジダ症
- 扁平苔癬
- 円板状ループスエリテマトーデス
- 梅毒性舌炎
- 口唇の光線性角化症
2017 年改訂の WHO 頭頸部腫瘍分類
白板症
臨床的あるいは病理学的に他のいかなる疾患の特徴も有しない白色の板状ないし斑状の病変を白板症といいます。定型的なものは、粘膜表面からやや高まった白色あるいは灰白色の板状または斑状の病巣を形成し、周囲との境界は一般的に明らかです。病変です。
- ガーゼなどで擦過しても除去できない
- 粘膜は柔軟性を失い、やや硬いものが多い
- 通常、自発痛、接触痛などの自覚症状はありません
- がんになってゆく確率(癌化率)は5~10%
- 舌癌の約18%に白板症が先行する
- 紅斑型、びらん型、潰瘍型、結節型、斑点型などが悪性化
歯肉白板症
舌白板症
紅板症
- 臨床的にも病理組織学的にも他の疾患に分類されない紅斑(WHO診断基準)
- 典型的な紅板症は鮮紅色の紅斑
- 組織学的には上皮性異形成から上皮内癌までの所見を示す
- 境界明瞭な鮮紅色の紅斑が典型、境界は明瞭なものが多い
- ほとんどの症例が刺激痛を自覚
- 紅板症の50%前後が悪性化する
歯肉紅板症
口腔扁平苔癬
- 皮膚との口の粘膜における慢性の角化異常
- 口の中の粘膜に見られる扁平苔癬は、幅1~2mmの白い細かい線状で、レース状や網目状になっていることが多く、ほとんどが頬の内側の粘膜に見られ、左右対称にできることも多い
- 40歳以上の中高年齢層に多く、女性に多く見られる
- 明らかな原因は不明。細菌やウィルスによる感染、歯科用金属アレルギー、ストレスなどが考えられる。
- 低い確率だが、がん化することから、前がん状態の範疇に入ります
口腔扁平苔癬との鑑別が必要な口腔がん
カンジダ症(Candidasis)
慢性肥厚性カンジダ症
円板状エリテマトーデス(Discoid lupus erythematosus)
直径5~10mmの紅斑状、円型、麟屑丘疹で毛嚢腺塞栓を伴う。粘膜障害、特に口の潰瘍がよくみられる。
鉄欠乏性貧血(Plummer-Vinson 症候群)による粘膜炎
鉄欠乏性貧血、舌炎、嚥下困難(←webとよばれる襞が多数出現)の合併
口内炎(慢性再発性アフタ)
アフタ性口内炎
口の粘膜にできる直径3〜5mm程度の円形ないし類円形の、痛みを伴う潰瘍・通常、1週間〜10日程度で治る。
口内炎の定義が不明瞭
→ 口の中の粘膜が変な状態が2週間以上続く、場所が変わらない、大きさが小さくならないなどがあれば口腔がん、前がん病変を疑う。
口内炎との鑑別が必要な口腔がん
歯周病
辺縁性歯周炎は、歯肉の発赤や腫脹・歯肉縁の退縮・歯槽骨頂の吸収や退縮を生じる
→ 歯茎が赤くなり、出血、排膿、歯が動揺。
ひどい歯周炎で歯の動揺していると思ったら、他の病気であったということも少なくありません。
エプーリス
エプーリスは歯肉に生じた腫瘤(かたまり)のうち、歯肉・歯根膜・歯槽骨骨膜由来の良性の線維性組織の増殖、あるいは肉芽腫のことです。
エプーリスは歯肉の結合組織、歯根膜あるいは歯槽骨膜から発生します。
その発現には不適合な充填物(つめ物)、補綴物(かぶせ物)、残根、歯石などの種々の外的刺激が関係しています。
また、妊娠の際に発現することもあり、内的因子として女性ホルモンの変調も関係すると考えられています。
良性腫瘍
口の中の入れ歯などの刺激やその他の刺激など、あるいは原因はよくわからないものの良性のできもの(腫瘍)ができることもあります。脂肪細胞による脂肪種、繊維製組織の増殖による線維腫、あるいは血管の腫瘍である血管腫などがあります。
白板症・紅板症などの前癌病変の悪性化のポイント
- 疣贅状、結節状、潰瘍形成、紅斑を伴う
- 大きさ:1cm 以上の大きさを有すもの部位
- 可動粘膜とくに舌、口底、頬粘膜に発生するもの
- 発症様式:多中心性あるいは多発性のもの
- 前の病理組織学的所見:上皮異形成が高度な病変