最先端の放射線治療

口腔癌に対する新しい治療戦略である「最先端の放射線治療」について。

陽子線治療、重粒子線治療とは

陽子線治療、重粒子線治療はいずれもがん放射線療法の一種で、がん細胞に放射線をあて、がん細胞の増殖を止め、死滅させる治療法です。

東京銀座シンタニ歯科口腔外科クリニックでは提携病院と連携して粒子線治療を行います。

放射線とは高エネルギー粒子の流れ(線束)のことです。光は粒子ではありませんが、最もよく知られた放射線の1つであり、特に波長の短い(エネルギーの高い)光をX線・γ線と呼びます。これらは、電離作用を起こすことから放射線治療に用いられます。

粒子線は高エネルギー粒子の流れで、やはり放射線の1つです。ここで言う粒子とは原子を構成している電子や原子核のことを言います。

高エネルギー原子核の流れは単に粒子線と呼ばれています。粒子線には原子の種類分だけの種類があります(図参照)。原子核のうちで最も軽いものは水素であり、次に、ヘリウム、リチウム、…、と続きます。現在、治療に用いられている原子核は、水素原子核と炭素原子核です。水素原子核は原子核の構成要素である陽子単体で出来ているので、水素原子を用いた治療を陽子線治療と呼んでいます。また、炭素原子核を用いたものは、X線・電子線の2~3倍の生物学的効果を持っていることから、重粒子線に分類され重粒子線治療と呼ばれます。

放射線医学研究所 重粒子医科学センター病院HPより引用

http://www.nirs.go.jp/hospital/radiant01/img/himac02_1.jpg

従来の放射線治療との違い

従来の放射線治療ではX線を用いますが、胸部レントゲンや歯のレントゲン写真のように診断のためにも用いられるX線はからだの中を通り抜ける性質が強いものです。X線は体内を通過すると次第に減衰しますが、エネルギーを通り道に与え、治療効果を発揮します。

X線のエネルギーの分布は体表面から1~2cm下の皮下組織で最も強くなり、その後次第に減衰していきますが、からだの反対側に到達しても、約30~60%ものエネルギーが与えられることになります。そのために、病巣にある程度の放射線量を照射しようとすると、X線の通り道になる病巣の手前の正常組織には常に病巣よりも多い量の放射線が照射されることとなります。また、病巣部を通り過ぎた向こう側にも引き続き放射線が照射されます。

X線と違い、 粒子線は小さいながらも粒子ですので、からだの中をある程度進むと、その部分に急激に高いエネルギーをあたえ、そこで消滅するという性質を持っています。つまり、X線とは異なり体を通過しないので、病巣部周囲のみに高いエネルギーが与えられ、病巣を超えるあたりの通り道にはエネルギーを与えずに少なくするように調整することができるのです。

そのため、粒子線はX線治療と比較してがん病巣部により高い量の放射線を照射することができ、より高い治療効果を得ることができます。また、体を通り抜けず病巣で高いエネルギーを出した後一気に減弱するので副作用も軽くなります。

陽子線治療

陽子線は、先ほど述べたように水素核を用いる粒子線です。X線よりもエネルギーが高く、身体の中に入るとある一定の深さまではエネルギーをほとんど出さずに進み、止まる直前に最大のエネルギーを出し、停止するという性質があります。

陽子線治療ではその性質を利用し、がん細胞のある場所で最大のエネルギーが放出されるように照射するポイントを調整することで、正常細胞への影響を最小限にとどめながら、がん細胞に効果的に放射線を照射することができます。

重粒子線治療

重粒子線治療は、先ほど述べたように炭素粒子を用いた「炭素イオン線」という放射線を使います。性質は陽子線と同じように、身体の中に入るとある一定の深さまではエネルギーをほとんど出さずに進み、止まる直前に最大のエネルギーを出し、停止するという性質があります。

陽子線に比べて重粒子線のほうがエネルギーが強く、集中的にがん細胞を攻撃することができるうえ、がんの破壊力も大きいといわれています。そのため、陽子線治療よりも放射線を照射する回数が少なくてすみます。

陽子線治療、重粒子線治療のメリット、デメリット

メリット

患者の身体への負担が少ない

陽子線治療、重粒子線治療ともに、手術などのように臓器を切除せずに温存できるため、患者の身体への負担が少なくてすみます。

高齢者や手術が難しいケースにも適応

がんが、手術で採りきるのが難しい場所や大きく広がっており手術の適応ではない場合や、心臓などの持病がある高齢者のように体力が落ちて手術できない患者さんであっても、治療を受けることができます。

デメリット

副作用や後遺症はほとんどないといわれていますが、治療後に放射線をあてた部分が痛んだり、皮膚がひきつれることがあります。また、口腔がんの場合に下顎骨の放射線性の骨髄炎、骨髄壊死などを起こす可能性鵜があります。また、病巣に近い部分の皮膚に皮膚炎が起こることがあります。

いずれも現在のところ健康保険は適用されておらず、先進医療に認定されています。口腔がんではあまり進行していないこと病巣が一箇所にとどまっていることが条件となります。また、以前同じ場所に放射線治療を受けている場合には行うことができません。

IMRT(強度変調放射線治療)とは

IMRT(強度変調放射線治療)は、放射線療法の一つで、最新のコンピューター制御のテクノロジーを駆使することで、がん病巣の形に合わせて放射線照射量を制御し、病巣に集中的に照射し、周囲の正常組織への照射を抑えるようにできる治療法で、健康保険が適用されています。

東京銀座シンタニ歯科口腔外科クリニックでは提携病院と連携してIMRT治療を行います。

これまでの放射線治療ではできなかった がん病巣に対するピンポイントの照射を行うことができるため、放射線治療の効果が出やすく、近くにある正常細胞に対する影響を最小限にできるようになります。

IMRTは、複数の放射線ビームをコンピューター制御システムで組み合わせることで放射線に強弱をつけ、がんのが複雑で凹凸があってもその形に合わせて必要な量の放射線を病巣の形に合わせて照射することができます。このことで、正常な細胞への影響も減らせるため、副作用を防ぎながら放射線療法の治療効果を高めることができるといわれています。

サイバーナイフ(定位放射線治療)とは

サイバ-ナイフによる治療

サイバ-ナイフとは定位放射線治療を行う放射線照射装置の一つであり、精密に放射線を照射できる最新鋭器です。従来の放射線治療装置を高性能のロボットにコントロールさせ、がん組織にピンポイントで必要な量の放射線を照射することができます。1992年、アメリカで開発され、そのロボットアームの動きは、巡航ミサイルが動く標的を追跡して撃ち落とす軍事技術を応用しており、照射の誤差は1ミリ以内と精度が高くメスのような鋭い切れ味の「電脳ナイフ」が名前の由来です。

健康保険は、口腔がんを含む頭頸部がんについて適用されています。

東京銀座シンタニ歯科口腔外科クリニックでは提携病院と連携してサイバーナイフ治療を行います。

また、通常の放射線療法では同じ場所に定められた量を超えて放射線をあてることはできませんが、サイバーナイフの場合は、放射線ビームは細く、あらゆる角度や方向から照射することができるため、従来の放射線治療を行った後に再発したがんにも用いられているケースがあります。また、サイバーナイフはがん病巣にターゲットを絞り、あらゆる方向、角度からピンポイントで放射線をあてることができるため、正常細胞を傷つけることが少なく、副作用も少ないといわれています。また、手術によって切らずに治癒が望めることから、患者への身体の負担も少なくてすみます。

口腔がんに対する通常の放射線治療では、腫瘍だけでなく正常な細胞も破壊してしまいますが、サイバーナイフは患部のみに放射線を照射し、腫瘍を壊すことができます。周りの正常組織を守りながら、直径3cmを超える腫瘍にも適応できます。また、「病変追尾システム」により、コンピューターが常に患者の位置を認識し、1cm以内の動きであれば病変を追尾し治療できることから、頭部の強固な固定がなくても、高精度の放射線治療ができる装置として開発されました。また、最大1200方向から照射でき、病変部の形状に一致した安全な治療が可能となっています。サイバーナイフによるがん治療では、通常の放射線治療に比べ、長期の入院や通院が不要です。また、治療にメスを使わないので、全く痛みはなく、傷跡も残らず、体に大きな負担をかけることもありません。

治療の流れ
  • CTにより腫瘍の詳細な情報を撮影し、コンピューターで、腫瘍の相対的な位置情報を記憶します。
  • 医師がCTのデータをもとに治療計画を作成し、シミュレーションを行います。
  • インフォームドコンセント(検討された治療法を説明し、理解頂いた上で承諾を得ます)を行います。
  • コンピューターがふたつの画像を瞬間的に比較して病巣位置を認識し、ロボットアームに病巣の働きを追いかける指示を出します。サイバーナイフ治療では、治療台に横になって平均1時間程度のX線を照射すれば終了です。仰向けなっているだけです。照射直後でも普通に食事や会話が出来ます。
  • 治療後、ほとんどリハビリに時間をかけることはありませんが、口腔がんの場合には、口内炎や咽頭炎ができ、食事しずくなることがあります。
サイバーナイフによる唾液腺癌治療(腺様嚢胞癌)

サイバーナイフ治療

サイバーナイフは高精度のロボットアームに小型の放射線治療装置を搭載した、定位放射線治療の専用装置で、ロボットアームによりあらゆる方向から腫瘍に集中的に放射線を照射することが可能です。腫瘍には集中的に放射線が照射されますが、周囲の正常臓器への照射は最小限にとどめることが可能で腫瘍に一度に多くの放射線を当てることが可能で副作用を軽減でき、この点からも効率よく治療を行うことができます。

腺様嚢胞癌とは

腺様嚢胞がん(せんようのうほうがん、adenoid cystic carcinoma、ACC)は、唾液腺などの分泌腺から発生する悪性腫瘍で、頭頸部領域におけるガンの1~2%程度の頻度で発生します。耳下腺や顎下腺などの大唾液腺や口腔内に発生し、40-60歳代に多く、やや女性に多く発生します。

治療法としてのサイバーナイフ・放射線治療

唾液腺がんの治療の選択としての化学療法と放射線療法に関しては有効とした報告もありますが、未だ一定の見解は得られておらず、治療の中心は手術と言えます。しかし、です。唾液腺腫瘍は腫瘍増大速度はゆっくりであるものの、がん細胞が周囲の組織に入り込みやすく、いわゆる浸潤傾向が強いので十分な安全域をつけた切除が必要となります。しかし、顔面や口腔の組織を広い範囲、切除することは患者さんにとっては負担が大きく、手術以外の選択肢を求める患者さんも少なくありません。病変の状態によっては切除した後に、追加で放射線治療を行う場合もありますが、それでは何のために手術を受けたのかわからない部分も生じてきます。

近年では重粒子線治療が有効との報告もありますが、長期的な合併症など不確実な部分も多く一般的な治療とはなっていないのが現実です。

サイバーナイフも放射線治療の一種で、唾液腺癌に対する一般的な治療法ではありませんが、手術をどうしても受けたくない手術を拒否される患者さんや全身のご病気などで手術ができない手術不能例に対しての選択肢の一つになると考えられます。特に重粒子線治療は保険外治療で非常に高額になりますのでその意味でも健康保険が適応されるサイバーナイフは選択肢の一つになると思われます。

症例1

87歳の女性で、口蓋部の腫脹を主訴に受診。生検に結果、腺様嚢胞癌。

患者さんが高齢であり,本人と家族が手術することを拒否したため、以下を説明し、同意を得たためにサイバーナイフでの治療を行った。①腺様嚢胞癌に対しては手術療法が第一選択であること。②放射線療法単独では手術療法より治療成績が悪いこと。③粘膜炎や骨髄抑制などの有害事象を引き起こす可能性があること、④頸部リンパ節の転移巣には有効でないこと。

サイバーナイフ後、口腔内の腫瘍は消失しPET-CTでも原発巣のSUV値は正常を示している。CTでも原発巣部の腫瘍は消失し、新生骨を認め、頸部リンパ節に再発、転移は認められていない。

症例2

62歳の女性、10数年前に口底癌(腺様嚢胞癌)にて腫瘍切除するも、翌年に再発し、また、肺転移を認め、抗がん剤による治療を行うも腫瘍は消えず、肺の担癌状態にて経過観察を行われていたが、舌の違和感と口腔底にしこりを認めるようになり、CTおよびPET-CTの撮影によって再発を指摘され何らかの治療を求めて受診した。

2回にわたり、サイバーナイフを行い、その後は、再発認めていない。サイバーナイフ照射における急性期有害事象としては口内炎を認めたが、悪心・嘔吐や血液像の異常などは認められなかった。

小線源治療とは

小線源治療は放射線療法の一つで健康保険が適用されます。小線源治療は、身体の外側から放射線を照射してがん治療を行うのではなく、がん病巣の内部に直接、放射線を発生する物質を埋め込んで、そこから放出された放射線によってがん細胞を死滅させます。

小線源治療には「腔内照射」と「組織内照射」の2つのタイプがあります。口腔がんでは、組織内照射を行います。放射性物質にも種類があり、短時間で大量に放射線をあてる「高線量率」、時間をかけて少しずつ放射線をあてる「低線量率」があり、放射性物質を一時的に入れる場合もあれば、永久的に入れておく場合もあります。

東京銀座シンタニ歯科口腔外科クリニックでは提携病院と連携して小線源治療を行います。

メリット

小線源治療は、体内のがん組織に直接放射性物質を入れてしまうため、正常な細胞への影響を極めて少なくしながら、放射線療法が行えます。そのため、口腔がんのような繊細な機能や感覚を温存したい臓器や器官では、特に力を発揮する治療法だと考えられています。

リスク

小線源治療は、体内のがん組織に直接放射性物質を入れて放射線療法を行うため、周囲の正常組織にも影響が出ます。特に口腔癌では重度の口内炎や放射線性の顎骨壊死や骨髄炎が問題になります。また、味覚障害や唾液分泌障害なども生じることがあります。

中性子捕捉療法(BNCT Boron Neutron Capture Therapy)

中性子捕捉療法(BNCT)とは

ホウ素が、正常細胞にはあまり取り込まれず、がん細胞に多く取り込まれることと、中性子がホウ素によって反応が増感することを利用した放射線治療の一つです。

ホウ素化合物をあらかじめ投与し、がん組織にホウ素が集まった時点で中性子線を照射すると、ホウ素をたくさん取り込んだがん細胞では細胞内部でホウ素と熱中性子の核反応が生じ、それにより発生したアルファ線と7Li粒子が腫瘍細胞のみを殺します。大きな利点は、アルファ線も7Li粒子もおよそ10ミクロンしか飛ばないため、正常細胞を傷つけることなく腫瘍細胞のみが選択的に治療できることです。一回(一日)の照射で治療が終了することも大きな特徴です。

現在は臨床研究の段階です。

東京銀座シンタニ歯科口腔外科クリニックでは適応を考慮し臨床研究に対してのご紹介を行います。

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