口腔癌の統計

口腔がんの統計

口の中にも癌ができることが、最近では知られてきていると思います。口腔癌は口腔粘膜に発生する上皮性悪性腫瘍、癌腫で癌全体の約2%程度ですが、直接、生命にかかわることはほかのがんとも同じで、幸いに最悪の事態は避けられた場合でも、「食べる」、「飲む」、「話す」、「呼吸する」などといった、私たちの「生活の質」に直接深く結びついている口の働きが大きく妨げられ、「生活の質」が著しく低下してしまうがんです。

正確なデータが集積されている2016年までの口腔・咽頭がんの国立がん研究センターの統計では、患者さんの数は20,000人を超えており、まだ増加しているのが現実です。

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そして、その死亡者数も2000年や2005年のデータのごとく死亡率が50%を超えるということはなくなりましたが、2015年でも37.9%と死亡率が減少していないのが現実です。

日本における罹患・死亡の統計

ここで、特記すべきは、欧米との比較で1995年から2015年までの口腔・咽頭がん患者さんの統計において、患者さんの数は米国が1.5倍から2倍多いのにもかかわらず、その死亡率は以下の表に示すように米国が25.8%から18.9%まで低下、改善しているのに比較して、本邦では53.5%からやや低下。改善していますが37.9%と米国の20年前の死亡率までにも至っていないのが現実です。

日本と米国における罹患・死亡の統計

グラフで比較するとさらに衝撃的な結果であることがわかります。米国ではある程度、正確な統計がなされるようになって1995年以降、その死亡率が本邦に比べて明らかに低く、多くの患者さんが口腔・咽頭がんで命を落としておらず、その率は年を追うことに着実に低くなっえいるのがわかります。一方、本邦では死亡率は2000年ころから若干低下傾向を示しているものの、高止まりであり、口腔・咽頭がんで命を落とす患者さんが多いことがわかります。

日本と米国における罹患・死亡の統計

日本の口腔がんの現状

では、どうして日本だけ口腔(咽頭)がんによってなくなる患者さんが多いのか?を表にして比較してみました。
米国では、
✔国を挙げての積極的な口腔がん対策による早期発見、早期治療に努めており、
✔半年に一度の口腔がん検診が実質義務化されており、
それに対応する✔歯科医師を教育し啓発する体制が確立されています。
しかし本邦では、✔自治体、歯科医師会による口腔がん検診が行われるようになってきていますが、十分ではなく、
✔口腔がん検診をどこで行うかも決まっていない自治体も多く、組織作りも行われておらず、
✔歯科医院、歯科医師による口腔がん早期発見再教育の必要性があると思われます。

なぜ日本だけ口腔がんで死亡する人が増えているのか

以下のポスターのような口腔がんのスクリーニングを歯科医院で行う体制が全くできておらず、がんを早期に見つけることができないため死亡率が低下しないのが現状です。

なぜ日本だけ口腔がんで死亡する人が増えているのか
https://www.rockdaledental.com/より引用・改変

本邦でも口腔がん検診が歯科医院を中心にいつでも受けられるような体制ができ、口腔がんの早期発見がなされ、口腔がんで命を落とす方が減ることを切に願います。

がんはどうやってできるか?

日本では年間約7,000人が口腔がんに罹患します。30年前の統計と比較してみると、約3倍に増加しています。このままの増加率でいけば、10年後には今の1.5倍となり、1万2千人以上が口腔がんに罹患すると予測されます。罹患率の増加も含めて、最近の傾向は喜ばしいものではありません。

アメリカやイギリスなどの他の先進国では国を挙げてがん対策に取り組んでいます。その結果、罹患率は高いのですが、アメリカの口腔癌の死亡者数は、最近の97年から5年間で、約1,200人以上という急激な減少がみられますし、イギリス、フランス、イタリアといった他の先進国の口腔・咽頭癌の死亡率をみても、アメリカと同様に減少傾向を示しています。

ところが日本では、死亡率・罹患率ともに右肩上がりが続いていて、現在は毎年約7000人が口腔がんにかかり、亡くなる人も3000人を超えています。日本のみが逆行し、取り残されているのです。

なぜ日本だけ、口腔がんによりなくなる方が増え続けているのか

なぜ日本だけ、口腔がんによりなくなる方が増え続けているのかアメリカを含めた先進国では、口腔がんによる死亡率が減少しているのでしょうか?
その理由は、国を挙げての積極的な口腔がん対策による早期発見、早期治療のあげられるとおもわれます。特に各基幹施設や基幹病院が中心となって、国民の口の中を一番見るであろう歯科医師を教育し啓発する体制ができていることが大きいと思います。

国民に口の中にもがんができることを知ってもらい、口腔がん検診などを広く普及させ、口腔がんにならないようにすること、口腔がんの検診システムを構築することが、口腔がんで死亡する人を少なくすることに重要と思います。

高齢になるほど増える口腔がん

高齢になるほど増える口腔がん日本における口腔がんの年齢的な特徴は、年齢別では、70歳代が一番多く29.1%、60歳代26.5%、50歳代が18.1%となり、50歳以上が約80%を占めています。性別では、男性は59.1%、女性は40.9%で、約3:2で男性に多くみられます(2002年度の統計)。

高齢化社会を迎えた日本では、超高齢者の口腔がん患者が、さらに増加すると予想されます。

口腔がんはどこにできるのか?

日本における口腔がんの部位別の頻度は、舌が最も高く全口腔がんの約40%を占めています。次いで多いのは、下顎歯肉(下あごの歯茎)20.3%、上顎歯肉(上あどの歯茎)12.0%となり、頬粘膜(ほっぺたの粘膜)10.3%、口底(舌と下のあごの歯茎の間)9.2%、上顎洞(上あごの上にある空洞)および口蓋癌(口の天井部分)の順です。

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